古代製鉄の起こりと鉄の道

 人類が鉄を使ったのは、空から降ってきた隕鉄が最初だったという説が有力です。隕鉄とは、隕石の一部で、鉄にニッケルが混じったものです。
 それではどこの国で鉄をつくる技術=人工製鉄が生まれたかというと、現在のトルコ共和国の地に昔栄えたヒッタイト帝国(紀元前1900年ごろ〜1200年ごろ)が、発祥の地だというのが有力ですが、疑問を持つ学者もいます。また、紀元前3000年前のエジプトの墓から鉄のビーズの首飾りが出てきていますが、これは隕鉄製と推測されています。
 ヒッタイトで見つかった粘土の板に刻まれた文字の解読によって、当時、鉄の値段が金の5倍、銀の40倍で取引されていたことがわかりましたが、この鉄が隕鉄か人工鉄かはっきりしません。いずれにしても初めの鉄の利用方法は、とても貴重な装飾品だったようですが、紀元前14世紀ごろから武器に使われるようになったらしいので、このころ人工の鉄が作られたのではないかと考えられています。
 どうもヒッタイト帝国に征服されたハッティ族がとても苦労して、このころすでに鉄をつくり、加工の仕方によりいくつかの性質を持つ鉄の特徴を見つけたようです。ハッティ族の製鉄や加工についてはまだまだわからないことが多いのですが、ヒッタイト帝国が滅び秘密にされていた鉄づくりや加工技術が、その後広くヨーロッパやアジアの東まで徐々に伝わったようです。
 そしてシルクロードを通って製鉄技術が中国に伝わったのは春秋時代(紀元前771〜403年)あたりで、続く戦国時代には本格的な鉄生産が始まり、紀元前3世紀ごろの秦の時代には農工具などもつくられるようになりました。やがて朝鮮半島の一部を経由して日本列島にも鉄の文化が伝わったようです。でも、これも最近の研究によると、北方ルートや海のルートなども考える必要がでてきています。
 日本列島に、まず鉄製品そのものが入ってきたのが縄文時代晩期と言われていますが、たたら製鉄の始まりについてはいくつかの説があり、だいたい5世紀前後と考えられています。しかし、考古学の研究からもっとさかのぼる可能性もあります。


前へ 目次 次へ